オキセタン類はエポキシド(歪エネルギー:27 kcal/mo1)と同様に高い分子歪エネルギー(26kcal/mol)を有しており、その環開裂を伴う分子変換反応は汎用性に富み合成化学的に重要である。ところが、オキヤタン類を積極的に合成中間体として用いる反応例は極めて少ない。このことは、オキセタン骨格の位置及び立体選択的な合成法の欠如に起因する。オキセタン類の合成反応として、小分子・カルボニル化合物とアルケンとの光[2+2]環化付加反応が古くから良く知られている。しかしながら、この反応は高い反応性を有するカルボニル化合物の励起状態、三重項ならびに一重項ビラジカルを経るので、オキセタン類の位置及び立体制御は困難であるとされてきた。申請者はこれまで、三重ビラジカルの分子ダイナミクスがオキセタン類の位置及び立体選択的な生成に重要である事を見出じてきた。本研究では、これまでの研究成果を格段に発展させ、小分子・カルボユル化合物を用いる一般性の高いオキセタン類の位置及び立体選択的な合成とその骨格を利用した新しい分子変換反応を実現する。この研究目的に際し平成19年度は以下の研究成果をあげた。 様々な小分子・カルボそル化合物を光により活性化し、炭酸ビニレン誘導体との付加環化反応を実施し、位置及び立体制御された双環性オキセタンの合成を実現した。また、その反応で得られる位置および立体制御されたオキセタン類の分子変換反応を試み、合成化学の進歩に貢献した。オキセタンの位置選択性はヘテロ原子で制御されると考えられるので、三重項ビラジカルの一重項ビラジカルヘの項間交差の速威を量子化学計算を用いて解析し、実験へとフィードバックした。
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