研究課題
本研究では、新たな高性能フォトクロミック系の構築を行うことを目的とし、チオフェン環を含むジチエニルジエンインの触媒的タンデム環化反応による縮環ジチエニルエテン類の合成とそれらの光異性化について検討した。また、関連するアセチレン誘導体の連続環化反応として、ジチエニルジエンインの熱的環化反応を用いる多環状チオフェン誘導体の合成、ジエチニルベンゼンの白金触媒によるBergmann型環化反応、ジナフトデヒドロ[10]アヌレンの近接する三重結合の渡環環化によるゼトレン誘導体の合成についても検討した。1. 縮環ジチエニルエテンの吸収波長の差を拡大する目的で、パラジウム触媒を用いる5-エキソ型連続環化反応に基づき、ドナー・アクセプター性置換基を持つジチエニルエテンを合成した。このものは分子内電荷移動に基づく吸収帯を可視部にもつとともに、光照射によりシス/トランス異性化を起こすことも明らかにし、目的としたシス/トランス異性化に基づく新たなフォトクロミック系を構築した。2. ジチエニルジエンインの真空熱分解により生成した3種類のナフトジチオフェンについて、それらを単離精製し構造を決定した。これらの化合物は有機トランジスタなどへの応用が期待される。3. 塩化白金触媒によるジエチニルベンゼン誘導体のナフトフラン類への新規変換法について、複数の基質への適用を検討し、その一般性と制限を明らかにした。4. 穏和な条件下での触媒的クロスカップリング反応を用いることにより初めてジナフトデヒドロ[10]アヌレンの単離に成功した。またこのものの近接する三重結合の渡環環化によりジヨードゼトレンが効率よく合成できること、さらにジヨード体から種々のゼトレン誘導体が導かれることを明らかにした。
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Synthetic Communications 39(印刷中)
Comptes Rendus, Chimie 12
ページ: 378-384
http://cobalt.chem.es.osaka-u.ac.jp/tobe/index-j.html