研究概要 |
2-アルキニル-2-エン-7-イン(A:5位にヘテロ原子を有する系も含む)を基本骨格とする化合物では,2-位にアルキニル基が結合すると,それがない場合には起こらない分子内エン反応が進行し,C(3)-C(7)間に炭素-炭素結合が形成されてシクロペンタン誘導体あるいはヘテロ5員環化合物を一般的に生成することが明らかになった。Aは,平成17年度にその基本的発生法を確立した2-プロピニル・アリル混成炭素陽イオンと様々な求核反応剤との反応によって容易に得られる。従って,エノン,アセチリド及び求核反応剤を出発物質として分子内エン反応を鍵反応とする炭素及び複素5員環化合物の一般的合成法が確立された。本反応を用いれば,2-プロピニル・アリル混成炭素陽イオンを活用して容易に得られる鎖状基質から一段階でマグノファルゲシン(血小板活性化因子のアンタゴニスト)の基本骨格を合成可能であることが見出された(現在論文作成中)。 一方,本年度発案して開始した研究の過程でアニオン挫分子内Diels-Alder反応を見出した。すなわち,DMSOを溶媒として4-oxa-1-ary1-1.6-diyneを塩基(triton-B)で処理すると,1.2-diene(allene)の炭素・炭素二重結合とary1基の炭素・炭素二重結合で構成される1.3-dieneと6-位の3重結合を求ジエン部とする分子内Diels-Alder反応が進行することを見いだした。本反応は,室温で速やかに進行する。このような高い反応性の要因は,炭素アニオンをジエン部に有することによってジエンのHOHO準位が上昇する結果であることを,DFT計算によって確認した。このようなアニオン性分子内Diels-Alder反応は,ルイス酸によって反応を活性化する伝統的な手法と並んで,一般的なDiels-Alder反応の活性化手法となるものと考えている(論文発表済)。
|