研究概要 |
本研究は、高効率な官能基変換プロセス実現のために、超高圧反応場の有用性を明らかにするとともに、そこから得られる情報を最大限に活用し、革新的な有機合成反応の開発に繋げることにある。その結果、以下の成果を得ることに成功した。 1.超高圧条件下でのアミド/尿素系化合物の共役付加反応:弱い求核剤であるアミド/尿素系化合物の共役付加反応は、通常強力な塩基や酸触媒の使用を必要とする。これに対し、p-TsOH触媒存在下高圧反応を行うと、望む1,4-付加生成物がきれいに得られることを見つけた。 2.超高圧条件下での含窒素複素環化合物のα,β-エノン類への共役付加反応:上記反応の延長として、α,β-エノン類への含窒素複素環化合物の共役付加反応を検討した。この種の反応も通常強力な塩基や酸触媒の使用を必要とする。種々検討した結果、超高圧条件下水中で反応を行うと、無触媒でも望む1,4-付加生成物がきれいに得られることを見つけた。本反応は種々の基質に対して有効である。 3.超高圧/チオ尿素系触媒を利用するケトン類の新規ヘテロDiels-Alder反応:カルボニル化合物のヘテロDiels-Alder反応は、ピロンあるいはピラノン類合成の最も直接的な手法である。しかし、これをケトン類で成功させた例は少ない。今回、チオ尿素系化合物を有機触媒とする高圧反応で、目的のヘテロDiels-Alder反応がきれいに進行することを見つけた。 4.超高圧ヘテロDiels-Alder反応を駆使した(+)-Boronolideのエナンチオ選択的合成:有機不斉触媒の利用を目的とした天然物合成研究の一環として、抗マラリア活性剤(+)-Boronolideのエナンチオ選択的合成を検討した。その結果、最終ステップとなるピロン環構築に超高圧ヘテロDiels-Alder反応が有効であり、これにより目的物の不斉全合成を達成することに成功した。
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