炭化水素の触媒的水酸化反応は有機合成化学や有機工業化学の分野において非常に重要研究課題の一つであり、古くから活発に研究が行われてきた。しかし、常温・常圧下での効率的かつ選択的な触媒的水酸化反応を達成した例は非常に少ない。本研究では、酸化反応触媒としてこれまで殆ど注目されてこなかったニッケル錯体や二核銅活性中心を有する銅タンパク質に着目し、それらを触媒として用いる効率的かつ選択的な脂肪族および芳香族化合物の水酸化反応の開発を目指して研究を行った。さらに反応メカニズムの詳細についても検討を加え、遷移金属-活性酸素錯体による脂肪族および芳香族化合物のC-H結合活性化機構を明らかにした。具体的な研究内容を次に示す。 (1)ニッケル錯体を触媒とするアルカンの選択的水酸化反応系の構築 : [1]配位子の設計と合成、[2]ニッケル錯体の調製とキャラクテリザーション、[3]ニッケル錯体を触媒とするアルカンの水酸化反応における基質適応範囲の検索、[4]酸化活性種の同定と反応機構の解明、[5]配位子および反応条件の最適化 (2)二核銅タンパク質を触媒とするフェノール類の選択的水酸化反応の開発 : [1]ヘモシアニンの単離・精製、[2]フェノール水酸化反応における触媒活性の評価と反応機構の解明
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