研究概要 |
すぐれた不斉触媒の開発は, 有機合成化学における極めて重要な課題の一つである。これまで, (R)-BINOLより誘導した光学活性環状リン酸ジエステルが, イミンとケテンシリルアセタールとのマンニッヒ型反応において, すぐれた不斉触媒活性を示し, 対応するβ-アミノエステルが光学純度良く得られることを見出している。ブテノリド骨格は, 生理活性化合物中に多く見られる骨格である。 今回, イミンとトリメルシロキシフランとのvinylogousマンニッヒ型反応による, ブテノリド誘導体の不斉合成反応を検討した。触媒として,リン酸の3,3'-位に2,4,6-(i-Pr)_3C_6H_2基を導入することにより, 最も良好な結果が得られた。更に, 6,6'-位にヨウ素を置換することにより, 更に不斉収率が向上することを見出した。5mol%の触媒を用いることにより, 対応する付加体が, 55-96%eeで得られた。これまで, 3,3'-位の置換基の検討は, 幅広く行われてきたが, 6,6'-位置換基の検討は行われていなかった。新規なキラルブレンステッド酸をデザイン, 開発することにより, これまでに報告例の極めて少なかった, イミンとトリメルシロキシフランとのvinylogousマンニッヒ型反応の不斉触媒化に成功した。ヨウ素置換基の効果については, 現在検討中であるが, 立体的な要因よりも, 電子的な要因に起因していると思われる。今後, 更に, 新しいキラルブレンステッド酸の開発が望まれる。
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