本研究ではアリール型反応剤をルイス酸触媒の存在下で縮合させ、対応する3成分カップリング体を高収率で得る検討を行い、さらに合成された縮合体を疑似ホルモン型治療薬ならびに光誘起性電子供与化合物に変換する検討を行った。まず、上半期では3成分連結反応の基質拡張を試み、ヘテロ元素を含有した求電子剤を用いることで所望のポリアリール型縮合体を高収率で得ることに成功した。さらに、p-ヨードベンズアルデヒドを求電子剤成分として用いて調製された中間体を活用し、抗腫瘍剤であるイドキシフェンを良好な収率で入手した。また、m-アニスアルデヒドを求電子剤成分として用いることにより、対応する縮合体から抗がん剤ドロキシフェンを得ることにも成功した。 一方、下半期ではp-アニスアルデヒドを原料として用いて調製された3成分縮合体の分子内閉環反応を試みたところ、ヨウ素カチオン種を活性中心としてもつ酸性触媒が円滑にこの求電子環化を促進しテトラヒドロナフタレン骨格を有する多置換ステロイド型薬剤の合成中間体が高収率で生成することが分かった。この新しい双環骨格形成法を鍵工程とし、骨粗鬆症治療薬であるラソフォキシフェンの新規供給法を明らかとすることができた。
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