研究概要 |
筆者らは20年以上前に,水銀トリフラートを開発し,様々な多環式テルペノイドの合成研究を展開してきた.最近水銀トリフラート・テトラメチルウレア錯体が末端アルキンの水和反応による,メチルケトンの生成反応を,強力に触媒作用(100回転以上)を発揮することを見いだした.従来法である等モル近い水銀塩を用いて,硫酸と共に加熱する方法からは,全くかけ離れた中性・室温での反応である.反応中間体のビニル水銀化合物がin situに生成するTfOHによってプロトン化を受け,カチオンの脱水銀化により,水銀トリフラートが再生する反応であると考えられた.水和的エンイン環化反応,アリールイン環化反応において,1000回転の触媒効率を極めて温和な反応条件下に達成した.触媒アリールエンイン環化反応は,触媒的生合成類似タンデム環化反応の初めての例であり,遷移金属触媒では実現不可能な,正に水銀塩の特性を活かした反応である.またC-C結合形成にとどまらず,水銀トリフラート触媒アルキンカルボン酸のラクトン化反応,アルキンカルボン酸を脱離基とする触媒グリコシル化反応,同触媒SN2反応,触媒フラン合成,触媒インドール合成,触媒環状炭酸エステル合成,触媒環状エノールエーテル合成,プロパルギルアセテートの触媒水和反応によるエノンの合成を達成した.さらに19年度にはオレフィンからの環化反応を可としアリールエン環化反応,N-アリルアルコール環化反応を実現した.また,アルケンの過酸化水素による触媒ジオール合成,アレンアリール環化反応おも達成した. これらの研究成果は10編の学術論文,1編の総説,25件の学会発表,及び6件の招待講演において発表してきた.
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