研究概要 |
インターロイキン(IL)-2,4,15,21とIL-15特異的受容体(IL-15Rα)との相互作用を速度論的、熱力学的ならびに構造学的に解析する:それぞれの分子種について、大腸菌を用いた発現・調製系を確立し、速度論的ならびに熱力学的に解析を進めた。IL4、IL21については、IL15R・鎖に対して、K_D=10^<-5>[M]程度の解離定数で相互作用できるのに対し、IL2はIL15R・鎖に対して結合しなかった。IL4及びIL21のIL15R・鎖に対する解離定数K_Dは、IL15と比較すると10^<-5>[M]程度減少するものの、これらの分子はIL15R・鎖に対して結合能を有しているといえ、これによりIL15R・鎖が多重特異性を有する分子であることが示された。算出された解離定数K_Dの値を考え合わせ、IL15R・鎖は静電的相互作用によりK_D=10^<-5>[M]程度の親和性で様々なILと結合し、続いてILの表面形状を認識することにより親和性を向上させ、IL15とのみK_D=10^<-11>[M]程度の安定な複合体を形成するという、受容体の特異性創出についての新規な分子認識機構が提案された。 シグナル伝達因子Tob1と各種相互作用分子(Caf1,SMAD6,7等)との相互作用を速度論的、熱力学的ならびに構造学的に解析する:Tob1ならびに各種相互作用分子(Caf1,SMAD6,SMAD7,ERK1)の大腸菌を用いた発現系を構築した。Tob1はNatively-Unfolded領域に起因したAggregation-Proneな分子であることが分かり、この領域の欠損によって可溶性度の著しい上昇を見た。ついで、各種相互作用分子との相互作用を観察したところ、いずれにおいても解離速度定数の小さな相互作用であることが明らかとなった。Tob1はN末端のTobファミリー領域以外に多くのNatively-Unfolded領域を持ち、これらと相互作用分子との結合によりTobが構造形成され安定化する可能性が強く示唆された。この相互作用様式を基盤に、InteractionTargeting技術開発への展開を目指す予定である。
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