研究概要 |
本研究の目的は,細胞内シグナル伝達蛋白質のリン酸化・脱リン酸化やそれに伴う会合・解離過程といった動的挙動を,細胞内でインタクトな状態のまま網羅的に精密観測する細胞内蛍光免疫イメージング技術を開発することである.具体的には,異なる二種類の蛍光標識抗体断片ScFvで細胞内シグナル伝達蛋白質をサンドイッチし,相互作用によって増強されるFRETに伴う二波長蛍光のレシオ変化を用いて,シグナル伝達蛋白質の動的挙動をイメージングする.そのためには,ターゲットとなるシグナル伝達蛋白質に対するScFvを迅速に取得する技術が必要である.ScFvを迅速に取得する技術として,動物細胞膜提示型抗体Fv-受容体キメラのライブラリーを作製し,抗原結合に伴う細胞増殖や細胞遊走を利用して,抗原に特異的に結合するFvを迅速に選択する方法の確立を目指した.その結果,抗原存在下で,細胞増殖速度が変化するFv-受容体キメラをスクリーニングする技術の改良に成功し,実際にライブラリーの中から抗原に応答して増殖速度が変化するFv-受容体キメラが選択できることも実証した.また,蛋白質抗原添加により,Fv-受容体キメラ導入細胞の細胞遊走が大きく変化することも確認でき,細胞遊走を指標としたスクリーニングのための基礎的な知見を集積できた.一方,細胞内イメージングのためには,ScFv-蛍光蛋白質キメラを細胞内に導入する技術も必要である.我々は,これまで用いてきたマイクロインジェクションに加え,顕微鏡観察下で特定の細胞のみにエレクトロポレーションを行う技術の開発を試み,基礎的な知見を集積した.
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