(1)出芽酵母におけるGATC-PCR法によるトランスクリプトームの定量解析 完全培地または最小培地で培養した出芽酵母におけるmRNA量コピー数を、GATC-PCR法により定量した。出芽酵母の全遺伝子の約8割について、定量データを得ることができた。一群のmRNAのコピー数増加が観察され、その大部分はリボゾームタンパク質遺伝子群であった。これらリボゾームタンパク質群の両培養条件での量的差異は、存在量比で比較するのに対し、コピー数の差分で顕著であった。トランスクリプトームの変動解析において、コピー数の差から情報を抽出することの重要性が示された。 (2)一部のmRNA群に焦点を当てた定量解析 mRNAの量的変動、および各遺伝子産物の機能が良く知られている例として、出芽酵母のサイクリン、CDK、およびCDKインヒビターを対象としたmRNAコピー数の計測を実施した。各遺伝子につき2種類のプライマーで定量解析を実施することで、全ての遺伝子についてのコピー数データを得ることができた。一方で、一部の遺伝子についての詳細な検討から、PCRに用いる遺伝子特異的プライマーをmRNAの3'領域側に設計することで、より正確な定量解析が可能であることが示唆され、定量システムの更なる最適化を実現した。 (3)PCS-MS法によるタンパク質の絶対定量計測技術の開発 大規模な絶対定量計測については、標準であるPCSのタンパク質試料への添加量最適化方法と、複数のPCSを階層的に使用する戦略を独自に考案し、大規模計測技術の基盤構築に着手した。
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