研究課題
これまでのDNAアプタマー探索の研究成果より、結合定数の良いDNAアブタマーを従来の方法で探索するのは難しいと判断し、新しい手法として原子間力顕微鏡(AFM)を用いた、物理的な相互作用の解析手法による探索アプローチを試みた。AFMは光学顕微鏡や電子顕微鏡では観察できない液体中での生物試料の高分解能観察ができる装置として期待を集めており、AFMの特徴であるフォースカーブ測定を用いることで探針・試料間に働く吸着力や、試料の硬さに関する情報が得られる。まず、AFMの探針であるカンチレバーに抗体分子を固定化して液体中で抗原・抗体間の結合力の測定を行った。その結果、抗トロンビン抗体を固定化したカンチレバーを用いてフォースカーブ測定を行うことでトロンビン-抗トロンビン抗体の結合力を測定可能とする系を構築できた。そこで次に、トロンビンをターゲット分子にしてAFMを用いた新しいSELEX法を以下の方法にて試みた。アビジンが固定化されたカンチレバーに対して、5末端をビオチン化した一本鎖DNAライブラリーを固定化し、トロンビンを固定化した金板を対象として走査させる。この時、トロンビンと一本鎖DNA間で結合が起こり、その結合がビオチン-アビジン間の結合より強ければ一本鎖DNAはカンチレバーを離れて金板上に残る。この一本鎖DNAを回収して増幅し、再び上記の操作を行う。このサイクルを繰り返せばビオチン-アビジン間の結合力を上回るアプタマーが取得可能であると考えられる。その結果, AFMを用いてSELEX法を行い、わずか5回のラウンドでターゲット分子との大きな相互作用を有するDNAアプタマーを取得できた。この結果は我々が提案するSELEX法が通常のSELEX法と比較して非常に効率的であると考えられる。また既存の卜ロンビンアプタマーについてAFMを用いてその親和力を測定した文献との報告がなされているが、そのデータと比較しても本研究で取得されたアプタマーの親和力は非常に大きいものであることが確認できた。以上の結果から、本研究において提案したSELEX法を用いれば、効率的にターゲット分子に対して強い親和力を持つアブタマーが取得可能である。
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