研究概要 |
種々の幹細胞ソースから再生心筋が得られるようになり、重篤な心疾患に対する新たな治療法として関心を集めている。一方で、移植された再生心筋が生体組織内で調和のとれた機能を果たすには、自律神経の制御が不可欠である。本研究においては、自律神経が心筋との間にネットワークを形成するプロセスを以下の2点に焦点をおいて調べ、神経支配を有する機能的再生心筋構築の可能性について探究した。その目的のために、ラット新生仔の心室筋細胞と上頸神経節由来交感神経細胞を共培養し、交感神経細胞の神経突起伸長に対する神経栄養因子等(glia derived nerve growth factor: GDNF, Brain derived nerve growth factor: BDNF、ciliary neurotrophic factor CNTF, Semaphorin3a: Sema3a)の添加、あるいはアデノウイルスベクターによるGDNF強制発現による効果を、免疫染色法、非添加のControl群と比較した。その結果、アデノウイルスによるGDNF強制発現あるいはGDNF、BDNF添加条件では神経軸索伸長が見られた。一方、CNTF、Sema3a存在下では、神経突起の伸長は抑制されていた。以上の結果から、アデノウイルスGDNF強制発現あるいはGDNF、BDNF蛋白の添加は心筋-交感神経ネットワークの形成に関連する因子であることが示唆された。
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