免疫細胞ネットワークにおいては、B細胞の1個の細胞はそれぞれ1種類のモノクローナル抗体を生産しており、それが全体として10の8乗もの多様性を生み出し、巨大な生体防御機構を形成している。これを分子レベルで理解するためには、各細胞がどのような抗体を作っているのか調べることが必要である。本研究においては、研究者らが開発したSICREX法(1細胞RT-PCRと無細胞蛋白質合成系を組み合わせ、B細胞1個由来の蛋白質(ここでは抗体)を合成させる手法)を用いて、生体中の各B細胞がどのような抗体を作っているのか、さらにそれぞれの抗体が何を認識しているのかを網羅的に調べることができるシステムの開発を行うことを目的としている。本年度は本システムの基盤技術を確立するため、まず一細胞-RT-PCRの最適化を行った。まずRT反応のキットを選定し直し、またその温度を最適化した。次にヒト肝炎ウイルスの表面抗原をGSTとの融合蛋白質として調製し、免役したマウスの脾臓細胞よりB細胞を回収し、SICREX法により効率よくモノクローナル抗体を取得することに成功した。現在得られた抗体の親和性を測定中である。以上のことより、本手法の基本技術をほぼ完成することができた。
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