近年in vivoで利用可能な『特定基質に対するイメージングプローブ』の開発が、様々な生命現象を解く上で鍵になる事が認識されている。本申請者はこれに対し、天然蛋白質を基体に用い、これに様々な基質応答性を付加した刺激応答性人工タンパク質の構築及び利用を考えた。プローブとして用いる天然蛋白質には、さしあたり緑色蛍光蛋白質(GFP)変異体を用い、特定基質の濃度が一定以上に上昇した際に蛍光発光が始まる変異体の設計を目指す。昨年度までに、金属イオンとの結合により大きく構造転移を起こす設計蛋白質を円順列変異を施した天然型GFPに導入する事により、金属イオンの存在下で蛍光発色が可能なGFP変異体の構築に成功している。しかしながら、認識する金属イオン選択性に関して難があったため、イオン選択性の向上を目指した変異体構築を行った。金属イオン認識サイトとなる設計蛋白質部位の配位性アミノ酸の選択検討により、これまでの変異体においては、Cu^<2+>、Zn^<2+>、Ni^<2+>の3種類のイオンともに結合可能であったが、Cu^<2+>あるいはZn^<2+>に対して高い選択性を持つ設計蛋白質部位の構築に成功した。また、Cu^<2+>に対して高い選択性の発揮される設計蛋白質部位を円順列変異を施したGFPと組み合わせる事により、今までよりもCu^<2+>に対して高い選択性を持つGFP変異体の構築にも成功した。一方で、核内レセプターリガンドをターゲットにした蛍光蛋白質変異体の構築を目指し、核内レセプターリガンドの一つであるビタミンA類と結合可能な、5本鎖コイルドコイル蛋白質を基体にした変異体蛋白質の構築に成功したが、本申請期間内で、この認識部位とGFPとを組み合わせる事による蛍光性センサー蛋白質の構築にはいたらなかった。
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