本年度は、各細胞小器官の機能変化と温度変化の相関関係について評価した。特に、エネルギー(ATP)産生を伴うミトコンドリア機能に焦点を当てて評価した。 ミトコンドリアではATP合成が行われ、細胞内のエネルギー産生場として知られる。ATPを産生する際には、ミトコンドリア内外にH+勾配を発生させ、H+移動の駆動力を利用する。すなわち、ミトコンドリアは熱代謝が盛んに行われていることが示唆される。また、褐色脂肪細胞においては、ミトコンドリアにプロトンを輸送するUCP1と呼ばれるタンパク質が存在し、温度発生を行っていると報告されている。そこでH+勾配の解消剤(FCCP)を処置した際の、ミトコンドリアの温度変化を温度センサーを用いて評価した。その結果、FCCP処置により、蛍光変化が起こり、温度変化が起こっていることが示唆された。また、H+勾配の構築を阻害する脱共役剤ロテノンをあらかじめ処置しておくと、FCCPを処置しても蛍光変化が起こらなかった。これらの結果は、ミトコンドリアにおける温度上昇を可視化できたことを意味する。また、褐色脂肪細胞に関わらず、他の細胞においても、ミトコンドリアのH+勾配を解消することで温度上昇が起こることも確認できたことを意味する。
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