研究概要 |
ヒト組織再構築中に生じる環境的ヘテロ集団(不均一性), 細胞的ヘテロ集団(不均質性)に対する分業組織の解明を目指し, 細胞レベル(微視的レベル, μmオーダー)での増殖・分化の現象を局所把握かつ1細胞ごとに生じるイベント(分裂・遊走・物質生成)を生物的パラメータにて整理した. さらに空間的・時間的積分することにより, 細胞間のコミュニケーションを加味した組織レベル(巨視的レベル, mm, cmオーダー)で集塊増殖, 分化, シグナリング, 力学的強度解析の方法論を構築することを目指した. 平成20年度では, 継代培養されたウサギ硝子軟骨を用い, 播種密度の違いによる, ゲル内での遊走性についての現象を発見し, パラクラインによるものであることがわかった. 特に, TGF-betalは, 培養初期においては, 細胞の遊走を促進し, 培養後期では, II型コラーゲン生成を促進することを示した. また, 本現象を, コラーゲン塗布面上へと展開し, 細胞集塊形成の機構についての定量的解析ならびに考察を行った. 一方, ゲル内の細胞分布は, 酸素濃度分布に依存すると考えられることから, ゲル内酸素濃度分布測定ならびにゲル内・細胞集塊内拡散係数の算出を実施した. 細胞集塊内における酸素拡散係数は, ゲル内のその値より, 1ケタ小さいものとなった. さらに, 細胞集塊内におけるタンパク質の拡散係数は, ゲル内の値より2ケタ小さく, 培養後期における, 培養軟骨組織表層における細胞集塊形成は, 組織深部へのタンパク拡散を, 不透性の壁で阻止している現象にて, ゲル内深部での細胞増殖を低下させることを明らかにした.
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