本研究は、細胞から分泌される細胞間情報伝逹分子を一細胞レベルにて計測することを目的とする。ハイドロトロピックデンドリマーをベースとした型細胞活動計測プローブ合成と蛍光解析と融合することにより、細胞間ネットワーク情報解析の基礎の確立を図る。 本年度は、ポリグリセロールデンドリマー(PGD)表層に糖鎖を導入し、蛍光ナノ粒子である量子ドット表面にPGDをコーティングした。マウスマクロファージ様J774.1細胞にPGDコート量子ドットを添加し、洗浄したところ、ナノ粒子が取り込まれる様子が観察された。そこで、この細胞の活性化の指標となる一酸化窒素産生を蛍光色素により定量したところ、2時間にわたり蛍光強度の増大が見られた。このことから、PGDをコートしたナノ粒子がマクロファージ様細胞を刺激し、細胞内活性を促したものと推察され、細胞活動計測の可能性を示した。 細胞活動計測プローブは、細胞内へ侵入する必要性があるため、マイクロメータサイズの粒子のナノサイズ化は必須の検討項目である。そこで、湿式微粒化装置(スターバーストミニ、スギノマシン(株))を用いた超高圧処理によりリボソームのナノサイズ化を試みたところ、z平均粒径が50MPaでの112nmから245MPaでは81nmにまで減少した。カルセインを用いた膜安定性評価実験を行ったところ、蛍光強度測定開始から10分間経時的にモニターすると処理圧に関わらず、蛍光強度に変化はなかった。このことは、50〜245MPaにて処理したカルセイン封入PEGリボソームは、PBS中にて安定にカルセインを保持していることを示していた。 以上より、PGDをベースとした蛍光解析による細胞活動計測ならびに超高圧処理によるリボソームのナノサイズ化に成功した。これらを組み合わせることにより、リボソームとPGDによる細胞レベルによる情報伝達解析への発展が期待できる。
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