研究課題/領域番号 |
19021047
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
宇理須 恒雄 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 教授 (50249950)
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研究分担者 |
手老 龍吾 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (40390679)
毛 艶麗 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 特別協力研究員 (80442531)
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キーワード | スフィンゴミェリン / コレステロール / ガングリオシドGM1 / アミロイド / フィブリル / セラミド |
研究概要 |
ラフトやカベオレの細胞膜主要成分である、スフィンゴミエリン(SM)/コレステロール(Chol)/GM1(40:40:20mol%)からなる脂質二重膜とアミロイドβ(Aβ)との相互作用を原子間力顕微鏡(AFM)と蛍光顕微鏡(FM)で調べた。非常に興味深い二つの新発見があった。まず第一は、平面脂質二重膜のドメイン構造がシリコン基板とマイカ基板との間で明瞭な違いが見られたことである。第二は、これらのドメイン構造の異なる平面脂質二重膜表面に比較的濃度の低い(1μM/l,2μM/l)のAβ水溶液を添加し、24時間放置するとAβの凝集が観測されるが、マイカ基板の場合はシリコン基板の場合と比べて凝集速度が桁違いに速いこと、および凝集体の構造がマイカの場合はフィブリル状でしかも一定方向に成長するのに対し、シリコン基板では粒状の凝集体が形成されるという明瞭な違いが観察された。また、二重膜にGM1が含まれていない時は全く凝集が観察されないことから、GM1とAβの反応が凝集の前駆体を形成していると考えられる。解析の結果現段階では以下のことが明らかとなった。マイカ表面ではその単結晶格子構造を反映して、脂質二重膜の相分離が誘起される、どちらの相も液相であるが、一方はGM1リッチ、他方はSMリッチである。GM1分子はSM分子の2倍以上の長さの分子であるにもかかわらず、不思議なことにGM1リッチドメインのほうがSMリッチドメインより膜の厚さが半分くらいに薄い。これはGM1分子が嵩高いヘッドグループとセラミド部分とで色々な角度で折れ曲がった異性体構造をとりえるため、GM1/SM/Chol脂質二重膜がマイカ表面では何らかのユニークな厚さの薄い二重膜の構造となっている、そしてこのGM1の構造の特殊性がGM1-Aβオリゴマーを形成しやすいため、非常に速い速度でフィブリル状の凝集体が形成されると考えられる。
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