研究概要 |
本年度は,細胞内でおこっているスフィンゴ糖脂質の合成過程を分子レベルで時空間分解定量解析するための二つの基礎研究を行った。すなわち,1)培養細胞におけるin vivoの実験系における糖脂質合成の解析に向けての,細胞培養の準備,使用する脂質プローブの合成と,2)in vitro,および,in vivoにおける実験から得られる糖脂質混合物の分析装置の開発である。 1)微量定量分析を可能とするために蛍光タグ,および,安定同位体標識したアナログの両者を合成した。後者は,質量分析条件下で内在性め糖脂質と判別が可能となるよう重水素の数を選定した。合成したラクトシルセラミドアナログについてシアル酸転位反応を行い有用性の確認をした。 2)分析装置に関しては,in vitro,および,in vivoにおける実験から得られる糖脂質混合物の微量定量的構造解析を行うために,ナノLC-蛍光検出-ナノスプレーイオン化-MS/MS分析をオンラインで可能とする装置の構築をおこなった。ナノLCは低拡散型ナノカラムの使用により効率良く分離,イオン化することが可能となり,質量分析法による極微量構造解析が可能となった。一方,細胞内で合成された糖脂質群を顕微鏡下で可視化後,構造解析する必要からも蛍光分析が必要であったが一般的な方法ではオンライセ蛍光検出が不可能であった。そこで,ズーム蛍光顕微鏡を用いナノカラム先端部を外部から観察する方法を検討した。これにより,混み合った質量分析装置のイオン化部における干渉からも解放され,容易に蛍光検出が可能となった。取り込んだムービーの特定領域の経時的蛍光分析をソフトウエアにより解析しクトマトグラム化にも成功した。このようにして今後のin vitro,および,in vivoにおける実験から得られる糖脂質混合物の微量定量的構造解析に必須となる解析装置を構築した。
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