本研究の目的は水滴を鋳型とした自己組織化によるハニカム状多孔質膜を導電性高分子から形成し、高い透過率と導電率を併せ持つ透明導電膜を作製する手法を確立する事である。透明導電膜を形成するためには、孔径を可視光の波長以下に調整することが必須である。本年度は導電性高分子からハニカム状多孔質膜を作製する手法と孔径の制御について検討を行った。 側鎖にメソゲンを持つ液晶性ポリアセチレンをクロロホルムに溶かし、結露水滴安定化のために両親媒性高分子を導電性高分子の10%程度加え、これを高湿度下でキャスト成膜することにより、ハニカム状に孔の開いた多孔質膜が得られる事を見いだした。またさらに、溶液の塗布厚みをキャスト量調整やブレード塗布等の手法を用いて薄膜化することにより、溶媒が蒸発する時間を制限し、水滴の成長を妨げることによって、サブミクロンスケールの空孔が形成されることも見いだした。 また、同様に導電性高分子であるポリ(3-ウンデシルチオフェン)から多孔質膜の形成を同様にブレード塗布により高湿度下で塗布製膜を試みたところ、多孔質膜が形成された上、孔径もサブミクロンスケールからミクロンスケールまで塗布条件の最適化を行うことによって調整できることを見いだした。 以上の結果から、導電性高分子からサブミクロンスケールの空孔を得ることができた。本研究成果は透明導電膜に必要なサブミクロンスケールの製膜技術の基盤技術となるものと考えられる。
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