本研究の目的は水滴を鋳型とした自己組織化によるハニカム状多孔質膜を導電性高分子から形成し、高い透過率と導電率を併せ持つ透明導電膜を作製する手法を確立する事である。透明導電膜を形成するためには、孔径を可視光の波長以下に調整することが必須である。本年度は導電性高分子からハニカム状多孔質膜を作製とその導電特性および光学特性について検討した。 昨年度までに作製したサブミクロンスケールの空孔を持つ導電性高分子からなるハニカム状多孔質膜の導電性を導電性原子間力顕微鏡により測定したところ、わずかではあるがハニカム構造のネットワーク上に電流像が得られたことから、未ドープ状態でも若干の伝導性を有するネットワークが形成されていることを見いだした。さらに光学特性の評価として、可視光における透過率を測定したところ、ミクロンスケールのハニカム構造では透過率は30%以下であったのに対し、サブミクロンスケールの空孔を持っ導電性高分子ハニカム膜は最大で60%程度の透過率を示した。これは空孔サイズが小さくなることによって、多孔質膜における透過率低下の主要因である散乱の影響が低下し、さらに導電性高分子のネットワークが表面積に占める割合が低下したためと考えられる。 以上の結果から、導電性高分子からサブミクロンスケールの空孔を得ることができ、透明導電膜への基盤技術を確立できた。
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