研究概要 |
本研究では主鎖の結合位置が規制されたチタナシクロペンタジェン骨格を繰り返し単位とした反応性有機金属ポリマーと様々な試薬の高分子反応を検討し、多彩な主鎖骨格をもつπ共役高分子を得る新しい合成手法を確立するとともに、パラレル合成の考え方に立脚した一連のπ共役高分子を一挙に合成する手法への展開を目指し、本年度は特に以下の研究を実施した。 まず、低原子価チタン錯体と2,5-ジアルコキシ-1,4-ジェチニルベンゼンとの重合により得られる主鎖の結合位置が 規制された有機チタンポリマーとジメチルスズ(IV)ジクロリドとの高分子反応を検討した結果、これまでに例のない主鎖にスタンノール骨格をもつπ共役ポリマーが得られることが明らかになった。各種スペクトルおよび分子軌道計算め結果などから、本ポリマーが極めてLUMOのエネルギー順位の低い特異な電子状態をもつ材料であることが示された。また、本系では高分子反応に用いる有機スズ試薬を選び、スタンノール骨格のスズ上の置換基を変更するだけで、得られるπ共役ポリマーの性質を容易に制御できることが明らかになった。例えば、四塩化スズとの反応により得られる塩素を置換基にもつ含スタンノールポリマーの場合、紫外可視吸収スペクトルにおいて吸収極大が518nm、吸収端が750nmと長波長領域に観測され、電気化学測定の結果ど併せて判断すると、LUMOのエネルギー順位が-4. OeVと見積もられ、新しい電子輸送材料などへの応用の可能性が示唆された。
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