研究概要 |
本研究では主鎖の結合位置が規制されたチタナシクロペンタジエン骨格を繰り返し単位とした反応性有機金属ポリマーと様々な試薬の高分子反応を検討し、多彩な主鎖骨格をもつπ共役高分子を得る新しい合成手法を確立するとともに、パラレル合成の考え方に立脚した一連のπ共役高分子を一挙に合成する手法への展開を目指した研究を総合的に行った。 まず、低原子価チタン錯体と2, 5-ジアルコキシ-1, 4-ジエチニルベンゼンとの重合により得られる主鎖の結合位置が規制された有機チタンポリマーと、各種スズ(IV)ハロゲン化物や塩化セレン(I)等の親電子試薬との高分子反応をそれぞれ行い、主鎖にスタンノールやセレノフェンなどの骨格をもつ対応するπ共役ポリマーが得られることを明らかにした。分子軌道計算、各種スペクトル、および電気化学測定の結果から、例えばスタンノール部位をもつポリマーは極めてLUMOのエネルギー準位の低い特異な電子状態をもつ材料であることが示され、高い電子輸送能をもつ材料としての応用の可能性が示された。また、本系では高分子反応に用いる有機スズ試薬由来のスタンノール上の置換基によって得られるπ共役ポリマーの性質を容易に制御できることが明らかになった。つぎに、有機チタンポリマーの合成に用いるジイン類の分子設計に立脚したπ共役高分子材料のパラレル合成の新手法の確立を目指し、光学的機能性の高効率な最適化、および不斉高次構造をもつ機能材料の構築をそれぞれ検討した。例えば、HOMO準位の高い複素環であるチオフェン骨格をもつジインから有機チタンポリマーを合成し、高分子反応により特にチタナサイクル部位をLUMO準位の低いホスホールやスタンノールなどに変換すると、長波長領域に吸収帯をもつバンドギャップの狭いポリマーが容易に得られることが示された。また、発光特性に優れたフルオレン部位をもつジインから有機チタンポリマー経由でπ共役高分子へと変換すると、高分子反応によって生じる環構造により発光色が青〜オレンジ色と顕著に変化することが示され、目的の機能をもつπ共役高分子材料を効率よく得るための新しい合成手法としての有用性が明確に示された。
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