研究概要 |
本研究では、らせん選択重合など精密重合により側鎖ラジカルの配置にキラリティを有するキラル共役ポリラジカルを合成し、かつその配置を水素結合により固定・制御することでラジカル配置と磁気的および光学的性質との相関を整理することを研究目的としている。本年度は、次の項目について明らかにした。 1. キラル共役ポリラジカルの組織化と磁気的性質 水素結合可能な置換基を有するモノマーとしてガルビノキシル骨格を有する4ベンジルオキシカルボニル-3, 5ジヒドロキシフェニルアセチレンのらせん選択重合により得られた光学活性らせんポリマーがm-位のヒドロキシメチル基による分子内水素結合により極めて安定ならせん構造を有していることから、これを化学酸化することで高スピン濃度の光学活性ならせん高分子ポリラジカルが得られることを明らかにした。また、ラセミ体の1-フェニルエチルアミンを用いて重合して得られた、鎖内でらせん方向がラセミ化していると考えられるポリラジカルと比較して、光学活性ならせん高分子ポリラジカルでは、非常に強い反強磁性を示した。分子間でらせん方向をラセミ化させたポリラジカルにおいても比較的強い反強磁性を示したこと、およびESRスペクトルにおいてg=4にΔm_s=±2の禁制遷移が観測されたことより、この強い反強磁性相互作用にらせん構造が大きく関与していることが示唆された。 2. キラル共役ポリラジカルの磁気光学効果 安定ラジカル構造を有する光学活性なポリ(1, 3-フェニレンエチニレン)について、MCDスペクトルでは300nm付近の主鎖発色団および470nmのガルビノキシルラジカル発色団の吸収に対応してファラデー効果が観測されたが、そのコンフォメーションに依存しなかった。一方、フォルダマー構造を形成することで側鎖ガルビノキシル間に大きな反強磁性的相互作用を誘起することが明らかとなった。
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