1. 2-Bis(4'-n-alkoxybenzoyl)hydlazines(略称名BABH-n)が形成する2つの液晶相[スメクチックC(SmC)相とキュービック(Cub)相]のメソ秩序構造の違いに注目し、構造形成の詳細を解明するとともに、その特異な構造に立脚した機能開拓のひとつの試みとして、発光性分子との2成分混合系の構築を試みた。主な成果は以下の通り。 1. BABH-n系のCub相(Ia3d相とIm3m相の2種類)は、アルキル鎖炭素数nが5以上(現時点では)22までと、過去に類例がないほどに広い範囲のnで形成される。詳細にみると、系はnの増加とともに低分子液晶領域(n=5-13)からブロック共重合体領域(n=15-)へと移行しており、その中間領域(n=13-16)にサーモトロピック系特有のIm3m相が発現しているという特徴が明らかになった。 2. 等方性液体からの構造形成に対してLandauの現象論を適用することにより、Ia3d相以外にIm3m相の構造が安定化されうることを理論的に示した。 3. X線回折パターンから求めた電子密度マップの最適化に最大エントロピー法を適用することにより、Im3m相のメソ秩序構造の解明に成功した。コア部分は局所的にはラメラ的なベシクルとIa3d相のような三分岐型のネットワーク構造の2通りの凝集構造を形成し、Im3m相はSmC相とIa3d-G型Cub相の中間的なメソ秩序構造をもつことが明らかになった。 4. アントラセン系の発光性分子を導入した2成分系においては、蛍光強度はIa3d相より高温側のSmC相においていったん増加したのち、等方性液体になると急速に減衰するという興味深い温度特性を示した。詳細は検討中である。
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