本研究では、液体と固体の中間状態に着目して、ポリマー溶液の加熱溶融状態を制御することで、溶液に可溶した導電性高分子を自己保持する手法の開発と共役ポリマー鎖の階層的な構造制御の可能性を検討し、有機トランジスタへの応用を目指した。更に、将来的に印刷プロセスにて作製するためには、有機半導体層だけでなく絶縁膜層も塗布法で作製する必要があるものと考えられる。そこで、有機薄膜作製後に、ゲート絶縁膜として有機ポリマー絶縁膜を用いたトップゲート構造を検討し、デバイス特性への影響を調べた。特に、共役ポリマーの中でフルオレン系材料に着目して、ITO電極をソース・ドレイン電極に用いた有機発光トランジスタへの応用に関しても検討を行った。主に下記の項目を検討した。 1. 大面積素子への展開が可能な新規薄膜形成方法の熱転写法にて、ゲル状共役ポリマーを用いて、トップゲート構造素子を作製し、約10^<-3>cm^2/Vsを有する飽和電流を示す典型的なトランジスタ特性を得ることができた。初期の成膜方法が素子特性に与える影響を調べると、ゲル状ポリアルキルフルオレンを用いて熱転写法で作製した場合、正孔移動度が約1.4倍上昇した。 2. フルオレン系共役ポリマーを用いてトップゲート構造素子により両極性トランジスタを実現し、さらに、ゲート電圧により共役ポリマーに起因するEL発光強度が制御でき、有機発光トランジスタへの応用展開の可能性を見出した。また、2種類のフルオレン系材料を用いることで、白色発光有機発光トランジスタを実現し、同じフルオレン系材料の組み合わせにより発光色を制御できることが示された。 3. 溶液プロセスにより作製したp型トップゲート構造チオフェン素子とn型ボトムゲート構造C60誘導体素子を用いた相補回路を構成してインバーターを形成した。
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