近年、主骨格にケイ素元素を有するポリマーは、通常の有機ポリマーにはない特異な性質を持つことから、盛んに研究されている。我々は、新しい試みとして、これらのポリマーの反応性を利用した酸化チタン表面への固定化と、有機EL素子に利用できるりん光発光用のホスト材料の開発などを試みた。以下に具体的な実績を示す。 1.ポリ(ジシラニレンオリゴチエニレン)のクロロフォルム溶液に酸化チタン電極を浸して、アルゴン気流下で紫外光を照射したところ、酸化チタン表面が黄色に変化した。得られた修飾電極を用いて色素増感太陽電池を作成し、その性能を評価したところ、ポリマーの紫外吸収に対応する波長で、顕著な増感効果が確認できた。表面へのポリマーの吸着量が少ないこと、ポリマーの吸収幅が狭いことなどから変換効率はあまりよくないが、色素増感太陽電池以外の無機酸化物表面への新しいπ電子系ユニットの接合法としても利用できると考えられるので、現在新たな展開を模索している。 2.有機電界発光(EL)のうち、現在りん光発光が原理的に高効率にあるものとして注目されている。われわれは、りん光発光用のホスト材料の開発を目的として、主鎖にビフェニレン骨格を持つケイ素ポリマーを合成し、それらが実際にEL素子中でホスト材料として機能することを見出した。ケイ素系の高分子材料をりん光ホスト材料として利用した初めての例であり、今後ポリマー構造の最適化を行っていく予定である。 3.その他に、ケイ素架橋したオリゴチオフェンのEL発光材料およびFET材料としての応用を検討した。
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