我々は、これまで機能性ケイ素-π電子系(Si-π)交互型のポリカルボシランの合成を各種行ってきた。平成20年度の研究では、これらの知見を基に新規機能材料の合成と応用を検討した。 (1) 新しいπ電子系を主骨格とするポリマーとして、シロールービチオフェン縮環系(ジチエノシロール)とピリジン、テトラフェニルシロール、キノキサリン、フェニレン、ビフェニレンの交互共重合体の有機EL発光材料としての検討を行い、これらのうちいくつかが単層のEL素子材料として有効であることを見出した。また、キノキサリンを有するものでは、分子内でのドナー-アクセプター型の相互作用があることを明らかにした。ほかに、ベンゾチオフェン、チエノピリジンを骨格とする新規な有機ケイ素材料の合成も検討した。 (2) オリゴチオフェンなどのπ共役ポリマーをアルコキシ置換のケイ素基で架橋したポリマーの合成、ベンゼンコア骨格をコアとしたオリゴチオフェン架橋分子の合成を行った。 (3) アルコキシケイ素-オリゴチオフェン交互ポリマーと無機酸化物であるITO(インジウムチンオキシド)、酸化チタンとの熱反応による化学結合の生成について検討し、表面をポリマー修飾した無機酸化物電極の作成に成功した。このうち、ポリマー修飾した酸化チタン電極は、色素増感太陽電池に応用できることを明らかにした。その光電変換効率は、0.12%であり、昨年度報告したジシラン架橋ポリマー修飾酸化チタン電極で得られた値より若干ではあるが、改善が見られた。 以上の結果は、ケイ素化学をベースとする有機電子材料の設計と合成に有用であり、今後の展開が期待できる。
|