カーボンナノチューブ(CNT)は、一次元の導電性ポリマーであるとともに、極めて優れた化学的、機械的、熱的特性を有する。一方、ポリイミド(PI)は、スーパーエンジニアリングプラスチックとして、化学、電子・IT分野で広範囲に利用されている材料である。ここでは、両者のナノコンポジットによる新規材料開発を目指した研究を行い以下の成果を得た。 合成した8種の全芳香族PIを用いて、単層CNT(SWNT)の可溶化実験を行った。これまでに得られた結果をまとめると以下の様である。(i)合成したPIは、極めて高いSWNT可溶化能を示すことがわかった。(ii)孤立溶解SWNTの存在は、AFMによっても確認された。(iii)SWNTの可溶化溶液の近赤外フォトルミネッセンス(PL)スペクトル測定によって、孤立溶解SWNTのカイラリティ(螺旋度)を決定した。孤立溶解のSWNTのカイラリティは、PIの化学構造が異なると変化することがわかった。(iv)溶媒依存性が高い。DMFやDMSOのような極性非プロトン溶媒中で高い可溶化能が認められた。可溶化は、アルコールや水系でも可能であったが、低極性溶媒中では、認められなかった。しかし、DMFやDMSO中で可溶化後にこれらの低極性溶媒中を90v/v%添加してもSWNTの孤立溶解は保持された。(v)前記と同様に、DMFやDMSO中で可溶化SWNT溶液にフィルム形成能があるポリマーを添加してもSWNTの孤立溶解が保たれた。(vi)可溶化したSWNTが高濃度(1mg/mL)では、SWNTゲル化が生成した。SWNT可溶化溶液の近赤外フォトルミネセンススペクトル測定より、溶液中のSWNTのカイラリティが決定出来たが、PIの化学構造の違いによるナノチューブのカイラリティ選択性はそれほど顕著ではなかった。
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