研究概要 |
本研究は,1.55ミクロン波長帯用にInGaAs/InAlAs材料系を用いた 五層非対称結合量子井戸の作製技術を確立するとともに,その優れた電界誘起屈折率変化特性を実証することを目的とする.また,光変調デバイスを試作し,超高速光制御デバイスへの応用可能性を示す.平成19年度は,以下の成果が得られた. 1.InGaAs/InAlAs五層非対称結合量子井戸マッハ・ツェンダー光変調器の試作:InGaAs/InAlAs五層非対称結合量子井戸をコア層とするマッハ・ツェンダー干渉計型光変調器を分子線エピタキシー法により作製した.Y分岐構造を採用し,位相変調部長は0.5mmとした.変調特性(静特性)を測定し,動作電圧3.6V,消光比30dBと良好な特性が得られた. 2.InGaAs/InAlAs五層非対称結合量子井戸の有機金属気相エピタキシー法による作製と位相変調器の試作:実用化の観点からは,分子線エピタキシー法のほか,有機金属気相エピタキシー法でも本構造が作製できることが望ましい.そこで,有機金属気相エピタキシー法により,本構造をコア層とする位相変調器を作製し,その電界誘起屈折率変化特性を実測した.その結果,1.55ミクロン帯を中心とした広い波長帯で,良好な屈折率変化が生じていることがわかった.ただし,この屈折率変化には,本来活用したい量子閉じ込めシュタルク効果によるもののほか,ノンドープ層の残留キャリアの移動により生じるキャリア空乏効果も低電界領域においては支配的であることが判明した.これらの実験により,より特性を改善するための構造設計指針がたった.
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