本年度は、これまでに検討してきた多元制御量子ドットの結晶成長技術をもとに、面型光スイッチングデバイスを試作してその光応答特性の評価を行うことを目指して研究を行った。 多元制御量子ドット結晶成長では、多層化構造量子ドットの結晶成長条件を詳細に調べ、光学特性との対応関係を確かめることにより、実際の光デバイス構造の製作に適用できる結晶成長手法を固めることができた。 面型光スイッチ構造として、量子ドットを多層膜分布帰還型共振器構造における電界強度ピーク位置に配置した構造を基本とした面型光スイッチデバイス構造を検討した。このデバイスは、励起光パルスの照射によって生ずる量子ドットの吸収飽和に伴って屈折率が変化し、これによって共振器反射率(又は透過率)のピーク波長がシフトするため、反射光強度がスイッチ出来ることに基づいている。このデバイス構造における物性・構造パラメータを反映できる光学特性解析ツールを転送行列法やFDTD解析法などを用いて開発し、面型光変調デバイスの基本設計を実行した。次にこの設計に基づいて結晶成長を行ってデバイスを試作し、フェムト秒ポンプ・プローブ分光システムによって本デバイスの光学応答特性の測定・解析を行った。これにより、32ps-80psの超高速光スイッチング応答を確認した。この結果により、多元制御量子ドットによる超高速光スイッチが実現可能性を実証した。
|