カーボンナノチューブはピコ秒程度の超高速の可飽和吸収効果を光通信波長帯で示すため、超高速全光スイッチング等の光制御を実現しうる有望な非線形光学材料である。この効果を発現させるデバイス構造として、光導波路は有力なデバイス構造である。本研究では、ナノチューブが含有されたポリマーをコアとする埋め込み型の導波路デバイスを作製する技術に関して、ポリマー材料特有の成型加工性を利用したいろいろな手法を新たに開発することを目的としている。 本年度は、前年度に引き続き、カーボンナノチューブを分散させるポリイミドとしてポジ型感光性ポリイミドを利用することにより、リソグラフィ露光と現像のみのプロセスでコア構造を形成することで、従来よりも大幅に簡便化された新しい導波路の構築方法の開発を試みた。具体的には、表面が厚く酸化されたシリコン基板上に、ナノチューブ含有感光性ポリイミドをスピンコートし、i線ステッパ装置によりコア構造のポジパターンを露光し、現像液で現像してコア構造を形成する技術を研究した。前年度までに、基板との密着性に改善の必要性があることが明らかとなっていたが、ナノチューブをポリイミドに分散する際に従来利用していた添加物を添加しない新しい分散方法の開発に成功し、基板との密着性が大幅に向上し、再現性良くコア構造を形成できることを明らかにした。 また、上記の手法や従来から開発してきたドライエッチングで加工する手法を用いて作製した導波路のデバイス特性をカットバック法で評価した。ナノチューブの分散量の異なるデバイスで比較したところ、分散量が増えるにつれて可飽和吸収の変化率は向上するが、分数量がさらに増えると調芯が困難になり、変化率が単純には増えないことを明らかにした。
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