研究概要 |
本研究では、高い頑健性を示す形状知覚の皮質メカニズムを計算論的に理解し、これを実画像に適応できる画像理解アルゴリズムとして提案することを目的とする。形状認知に関わる広範な知覚現象を普遍的に理解し、さらに脳内の形状表現を理解するための重要な示唆を与える。H19年度は、形状知覚の基礎機構である周囲検出(輪郭における図方向決定)について、計算論的・心理物理学的な理解を進めた。計算論的には,物体周囲を決定する過程を検討した。輪郭各部分のどちら側に図があるかを示す図方向細胞が、物体ごどに群化され、どの線分がどの物体に属しているかを決定する過程を検討した。このモデルを定量的に評価するために,心理物理実験を行なって,図方向知覚特性とモデル特性を定量的に比較した.すべての形を近似する独創的なランダムブロック刺激を用意して,それらの図方向知覚の正答率・反応時間・注意効果を測定し,図方向知覚の難易度をランク付けた。同一の刺激についてモデルのシミュレーションを行なって,その結果を心理実験のランクと比較した.シミュレーションの結果と心理実験の結果は良い一致を見せた。さらに,知覚特性を実現する計算論的本質を明らかにするするために,自然画像を入力とする解析を行い,その結果をヒトの大局的判断と比較したところ,約70%の正答を得た。これは,ヒトが局所情報から得られる正解率とほぼ同一である。さらに誤答の解析を行ったところ,Gestalt因子と類似の局所特徴が誤答を導くことが判った。これらの結果は,提案するモデルがヒト知覚をよく再現している事を示す。
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