研究概要 |
情報爆発時代のソフトウェアは, 質・量とも爆発的に大きくなる情報を有効に活用するため, それとおなじくらい爆発的に拡大する計算・通信・記憶資源の多様性に, 柔軟かつロバストに適応する能力を備えなければならない. このような適応能力(以下総じて「自動チューニング機能」と呼ぶ)は, 一般に情報収集→推定→最適化→実行制御という流れで実現される. 本研究では上記の流れの4つの部分のうち, 計算環境や応用分野への依存が少なく, 数理の世界で表現できる推定と最適化の部分に焦点を当て, 自動チューニングの数理の普遍的構造を明らかにし, 情報爆発時代の資源とデータに柔軟かつ確実に適応するシステムを実現するために必要となるロバストな自動チューニング機構の数理的基盤を構築することを目的とする. 平成20年度は2つのサブテーマについて特に注力して研究を推進した. 「オンライン自動チューニングのための逐次実験計画」では,一般のBayesモデルにおいて性能を適切に学習できなくなる場合があることを指摘し, そのような事態を確実に回避できるようなBayesモデルの定式化を行った. また, そのようなBayesモデルを具体的に示すことにより, 確実に性能を学習して, 最適解に近づいてゆける手法を確立した. また, 「未知の組み合わせにおける性能の推定」では, 連立一次方程式の反復解法ライブラリであるLisをターゲットとして, 部分的な実験データから未測定のパラメタの組み合わせにおける収束・発散および所要時間を予測することを試みた. その結果, パラメタ探索を効率化する複数の手法が得られた. これらの手法は, 実験および最適化の目的関数によって使い分けるものである. このほか, 自動チューニングとその周辺のさまざまな研究課題に取り組み, また, 3年連続で国際ワークショップを主催し, 自動チューニング研究を世界的にけん引した.
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