情報爆発の克服のためにはコミュニケーションにおける「場」や「間」の共有が不可欠である。本研究の目標は、対話をモデル系として「間」の共有機構を解析し、共創的情報統合の支援システムを構築することである。本年度はプロジェクトの2年次として対話コミュニケーションにおける発話タイミングの制御機構について実験的に分析した。 その結果、「それ取ってください」「はい」という対話において指示発話長と交替潜時の間に強い相関が観察された。特に、指示者の発話長の変化が小さく被指示者にタイミング変化が認知されにくい条件では負の相関が、発話長変化が大きく認知されやすい条件では正の相関が観察された。さらに両条件での相関係数の分布には有意差が存在した。 このことは、交替潜時が指示者の発話長と相関することは、対話において相互の「間」(主観的タイミング)がインターパーソナルに同調することを意味している。さらに、その相関関係が認知の有無によって異なることから、タイミング機構が二重化されていることも示唆される。これらの特徴は我々が先に提案したタッピングのタイミング機構と類似しており、対話モデルへの道が拓かれた。
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