研究課題
情報爆発時代の背景には、記号化された言語的情報に偏ったコミュニケーション支援技術の拡大がある。この問題を克服するためには、言語的情報と同時に、情報を「統合」するためのコンテクスト情報の共有促進が不可欠である。そして、コンテクストを生む「場」や「間」をインターパーソナルに共有することで情報統合を促進できる「共創的コミュニケーション」の研究が重要になる。われわれは、平成18年度には「間」の共有プロセスの基礎的調査として、合意形成という情報統合の対話に注目し、言語的情報のやりとりと「間」の時間変化の同時計測を行った。具体的に、合意形成の対話において、言語に関わるセマンティクスと「間」のダイナミクスの時間発展の同時計測を進めた。前者は会話分析を用いて合意度として評価し、後者は会話の交替潜時(ポーズ長)の相関解析を行った。その結果、合意度の上昇とともに被験者間のポーズ長の時間発展が同調する現象を発見した。その結果、言語に関わるセマンティクスと、「間」に関わるダイナミクスの両方がインターパーソナルな情報統合に不可欠であることが明らかになった。これを踏まえて、平成19〜20年度には「間」の共有機構のモデル化として、そのような共創的コミュニケーションを人間同士の簡単な指示-応答対話に限定し、発話と身振りのタイミング機構を分析し、それを人間とロボットとのインタラクションの中に再構成することに取り組んだ。そして、言語情報の意味が、その発話や身振りのタイミングによって変化することを実証するとともに、それがどのような条件のもとで情報統合に寄与するかを調査した。その結果、簡単な指示-応答対話における発話と身振りのタイミング制御モデルを明らかにし、それをロボットに実装し評価することに成功した。これは情報の統合における「間」の重要性を示した初めての実験である。
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