本年度は、前年度までに開発した金融データ分析の2つの新手法のアルゴリズム(テキストマイニングと人工市場シミュレーション)を基にして、プロトタイプ・ソフトウェアとして計算機上に実装を行った。さらに、提案アルゴリズムの評価と金融現場への実用化を目指して、実際の金融データを用いて、提案アルゴリズムによる取引行動の評価手法に関する検証を行った。テキストマイニングによる市場環境分析手法の研究として、長期的な市場動向を分析するテキストマイニング手法を世界に先駆けて開発し、試作版ソフトウェアとして計算機上に実装した。金融実務者との共同により、本ソフトウェアを用いて、株式市場・国債市場・外国為替市場の動向分析を試み、既存の数値データを用いた動向分析の結果と比較検証した。既存の数値分析手法に比べ市場分析の推定精度を平均48.42%、最大74.03%改善することに成功した。人工市場シミュレーションソフトウェアの研究として、本年度は仮想的な市場のマルチエージェントモデルである人工市場を、分析目的に応じてスタンドアロン型とクライアント/サーバ型の2種類の試作プログラムを実装した。実デーダによる執行リスクの事前評価の研究として、上述のプロトタイプシステムを用いて、大規模取引行動の一種である介入行動が市場に与える影響の評価を行った。シミュレーションの結果、現状より70%以上も市場を安定化させる介入行動ルールを特定することができた.さらに、市場制度の変化がもたらす影響は、市場参加者たちの持つ取引戦略の組合せに依存することを、シミュレーションによって明らかにした。
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