研究概要 |
有限要素解析と結晶塑性解析を組み合わせた手法においては,構成モデルを決定することができれば粒界近傍特有の材料挙動を再現しつつ,マクロなスケールの予測ができると考えられる.この考えに基づき,粒界近傍の転位の挙動を分子動力学法を用いて,発生した転位の振る舞い,粒界と転位の相互作用,微小欠陥と転位の相互作用についての観察を行った.具体的には,対応粒界を持つ銅の双結晶を対象として,20×40×2[nm]の領域の数値シミュレーションを行った.対応粒界として,Σ3とΣ17bの2つのケースを比較のために用いた.Σ3対応粒界が転位のsinkとなっている状態,Σ3対応粒界が転位のsourceとなっている状態が観察された.nominal strainはそれぞれ6%,12%程度である.同様の挙動はΣ17b粒界でも観察された.また,Σ3対応粒界近傍に直径1[nm]のvoidを配置した場合のシミュレーションを行ったところ,転位の活動により,微小なvoidが消滅するという結果となった. 以上を要約すると、変形過程で粒内で生成した転位は結晶粒界に到達するといったん吸収されるが,さらに変形を加えると,再びその近傍から転位を生成する現象が観察された.また,微小な欠陥が,転位の活動に伴う原子の進入により消滅する現象も観察された.
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