研究概要 |
今年度は本特定領域研究の標準試料の一つである純度99.99%の純アルミニウム(4N-A1)を研究対象とし,ヴィッカース微小硬度と直流電気抵抗測定によって超強加工材の強度と格子欠陥密度の関係を調べた.まず繰り返し重ね接合圧延(ARB)法によって強加工を施し,その後等温時効と等時時効熱処理を行い,各段階における硬度と電気抵抗を測定した.硬度は九州大学グループによる等面積屈曲押し出し(ECAP)により加工した材料の引張試験のデータ,および大阪大学グループによる無潤滑ARBにより加工した材料の硬度データとよく一致しており,ひずみ2から3で極大となり(値は降伏応力で130-150MPa),より大きいひずみではやや低下して一定(120-140MPa)となった.電気抵抗(77Kにおける値)はこれとは異なり,ひずみ3程度まで上昇したあとほぼその値を保ち低下しない.ひずみ0.8の試料と5.6の試料について,30minの等時焼鈍と176^Cの等温焼鈍における硬度と電気抵抗の変化(回復挙動)を調べたところ,硬度はある程度時効が進んで始めて低下し始めるのに対し,電気抵抗はそれより早く時効の序盤から回復することがわかった.また,硬度はひずみ0.8と5.6の両試料でほぼ等しく回復のおこる早さも同程度であったが電気抵抗の回復挙動はひずみ5.6のほうが早くしかも顕著であった.未加工材,加工材2種(ひずみ0.8と5.6)の力学損失を共振自由減衰法(振動数約1Hz)で温度-170℃から+170℃の範囲で測定したところ,力学損失の大きさは電気抵抗(すなわち欠陥密度)におおむね対応することが知られた.
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