巨大ひすみ加工の一種である、繰返し重ね接合圧延(ARB:accumulative roll bonding)により作製した超微細粒材料の疲労特性について検討を行った。試料は、hcp系である工業用純Ti(JIS2種ASTM Grade2)とFCC系である工業用純Al(JIS1100)を用いた。6サイクルまでのARB材を種々作製し、疲労き裂進展試験を行った。疲労き裂進展試験は、応力比R=0.1の条件でCT試験片を用いて行った。 6サイクルARB-Ti材は、圧延方向(RD)に伸長した結晶粒と等軸粒が混在した組織であった。このような混在した組織は、ARBを施したAl等のFCC系、BCC系材料では観察されておらず、Ti特有であった。超微細粒純Tiのき裂進展速度と応力拡大係数範囲の関係を明らかにした結果、ARBによる結晶粒超微細化により、下限界応力拡大係数範囲およびき裂進展速度が大きく低下することを明らかにした。これは、材料中にき裂が存在した場合、6サイクルARB材のき裂は、粗大粒材に比べ、低い応力で進展するが、その速度は遅いことを示している。この下限界応力拡大係数範囲の低下は、き裂閉口現象によるものと考えられる。一般に、疲労破壊は、き裂発生、き裂伝播、最終破壊に分けられるが、その内、き裂伝播が大部分を占める。そのため、結晶粒超微細化による、き裂進展速度の低下は、疲労寿命の向上に大きく寄与すると考えられる。
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