種々のCVD条件で成膜したSiN膜がSi基板に導入する歪とその起源を明らかにした。Si基板全面にSiN膜を成膜し、基板のそりを測定することでSiN膜の内部応力を測定できる。内部応力は成膜条件で種々に制御することができる。そのままではSi基板に導入される歪は小さいが、SiNをパターン状に加工することで飛躍的に大きな歪がSi基板に誘起される。SiN膜下に誘起される歪はSiNの内部応力と逆方向(引っ張り内部応力であれば圧縮歪、圧縮内部応力であれば引っ張り歪)で、その大きさに比例する。また、この歪は、Si基板最表面かつSiNパターンエッジに局在する。その際に、SiNパターンエッジで挟まれた領域には、その間隔が狭ければ狭いほど大きな歪が導入され、歪の方向はSiN下と逆方向、すなわち内部応力の方向と一致する。これが、MOSFETのS/Dに内部応力を持つSiN膜を接触させた際に、チャネルに導入される歪の起源である。 SiN膜の内部応力は、X線反射率測定で得られたSiN膜の密度により異なり、膜密度2.62〜3.07g/cm^3に対して-1300〜1300MPaと両者には相関係数-0.93の線形関係が認められた。SiN膜密度はFTIRで測定した膜中Hの含有量と線形関係にあり、したがってCVD条件の制御でH含有量を変化させることで制御可能である。また熱処理を加えるとHが外方拡散で減少するため密度が変化し、したがってSi基板に導入される歪も変化する。以上より、Si基板に制御された所望の歪を導入し、LSIの高性能化に利用するためには、CVD条件の制御によりSiN膜に取り込まれるHの量を制御し、SiN膜の内部応力を制御することや、SiN成膜後に熱処理を加えることで、膜中H量を制御する方法が有効であることが明らかとなった。
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