研究概要 |
レニウム6核錯体の励起状態:[Re_6E_8(OH)_6]^4-(E=S, Se)クラスター錯体の水溶液中におけるpH化学平衡の詳細を明らかにした。このクラスター錯体の発光量子収率および寿命は溶液のpHに大きく依存し、低および高pH領域においては強く発光するとともに、比較的に長寿命であるのに対し、中性付近においては非発光性であることを実験的に見出した。さらに、pH条件によって[Re_6E_8(H_2O)_6]^2+、[Re_6E_8(H_2O)_n(OH)_6-n]^n-4、[Re_6E_8(OH)_6]^4-の化学種を有することを、各々の化学種の単離とX線構造解析から明らかにした。さらに、[Re_6S_8Cl_6]^4-および[Mo_6Cl_<14>]^2-錯体の低温から室温にわたる励起物性を詳細に調べることにより、発光状態である励起三重項状態のスピン副準位パラメータを決定することに成功した。 ホウ素架橋型配位子を有する白金(II)錯体の励起状態:トリアリールホウ素部位を有するターピリジン白金(II)錯体([Pt(tpy-B)Cl]^+)を新規合成するとともに、その結晶構造や励起状態の特徴を明らかにした。本錯体は白金から配子へのmetal-to-ligand電荷移動(MLCT)と配位子のπ軌道からホウ素原子上の空のp軌道への電荷移動相互作用が共同的に作用する特異な励起状態をとることを明らかにした。これを反映し、ホウ素原子を持たない類似錯体に比べ、新規錯体のMLCT吸収強度および輻射速度定数の増大が観測された。その結果、この新規錯体は室温の溶液状態において強く発光する。このようなp・π・d軌道相互作用は白金錯体に留まらず、Ru(II)などの他の遷移金属錯体にも適応可能であり、種々の錯体に一般化することが可能であることを明らかにした。
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