研究概要 |
燃料電池をはじめとする電気化学プロセスは、環境に優しいエネルギー及び物質変換システムの基本プロセスとして期待されているが、多くの場合化学結合の形成、解裂を含む多電子プロセスであり、高度な機能を持った電極触媒を開発する必要がある。例えば、幅広い利用が見込まれている直接形メタノール燃料電池の実用化における最大の課題はPt触媒の被毒抑制であるが、Pt近傍にRuを配置することで、COの脱離を促進し、被毒を抑制できる。現在、このような合金ナノ粒子は、各々の金属塩化物をソースとして担体上に電析することで作製されているが、一様な形状・組成を有する合金粒子の作製は困難である。本研究では初めから特定の機能を持っ複数の金属が近接しており、かつ規定比を有するヘテロ金属多核錯体を合成し、これを原料として、均一形状及び組成を有する活性合金ナノ粒子触媒の作製を目指した。2,5-dimercapto-1,3,4-thiadiazole(DMcTH_2)を配位子に用い、それぞれのチオール基の反応性の違いを利用することで、段階的にPt-Ru錯体、Pt-Pt錯体、Pt-Pd錯体などを合成することができる。本年度はPt-PtおよびPt-Ru錯体を原料とする微粒子触媒の調製と評価を行った。これら錯体を金(111)単結晶電極表面上に吸着させた後、加熱分解、電気化学的分解、UV-オゾンクリーナーによる分解を試みたが、酸素雰囲気下、300℃にて焼成することにより有機配位子の脱離・分解に成功した。このようにして作製した白金微粒子修飾金電極を作用極として、0.1M過塩素酸水溶液中で水素発生(HER)領域の電気化学測定を行ったところ、水素発生電流が観測された。さらに正電位を印加した後、再び水素発生領域まで還元したところ、HER電流の顕著な増加が見られ、熱分解と電気化学的酸化の組み合わせにより高い触媒活性を実現できた。
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