Pd4型の平面四核錯体を新たに合成した。これらの錯体の二次元機能を検討するために、各種錯体の合成法の開発を積極的におこなった。シリルパラジウム錯体のホスフィン支持配位子の置換反応などによって各種の錯体が生成すること、反応条件の調整によって目的とする平面錯体をほぼ理論収量に近い収率で得られることがわかった。これらの二次元機能を制御するために、白金を含む錯体を合成し、その電子状態について実験的に検討した。その結果、一部のパラジウム原子が白金に置換した形の新しい錯体を得ることができた。 二次元構造が連なった鼓状構造を有する八核パラジウム錯体の合成を行なった。四核パラジウム錯体に一級シランを添加し、系を放置すると、橋かけ有機ケイ素配位子がすべて添加シランに交換され、新しい八核パラジウム錯体が生成した。この錯体は溶液中では動的な挙動をNMRのタイムスケールで示すことがわかった。この挙動は八核錯体の平面構造をひきよせる橋かけジホスフィン配位子の結合様式が溶液中きわめてすみやかに変化しているためであると結論づけることができた。これらの結果は、新規な平面四核錯体構造の安定性が共存配位子の種類によって大きく変化すること、熱力学的な支配で安定性が左右されているため、反応条件を調節することによって、生成物分布を制御することを示している。 このように得られた基礎的知見をもとに、本領域に新たに貢献する研究を推進するため、他の支持配位子を有する多核錯体の合成をおこなった。現在、前駆体の合成まで成功しており、今後の研究で目的とする平面型多核錯体の合成および構造解析をおこなうべく予備実験をおこなっている。
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