研究概要 |
窒素や酸素を配位原子とするハードな配位子を含む後周期遷移金属多核錯体は、機能性材料などへの利用の可能性から合成法開発が望まれている。本研究では特徴ある三次元構造と高い機能とを持っ混合金属クラスターを精密合成する方法を開発することを目指して、シアナミドおよびホスホナト架橋錯体の新規合成と特性の開発を検討した。 まず補助配位子としてアレーンを持つシアナミド架橋ルテニウム錯体について検討した結果、従来にない構造の錯体の合成に成功した。すなわち、[RuCl_2(η^6-C_6Me_6)]_2とNaNCNHをメタノール中で反応させることにより、二核錯体[{(η^6-C_6Me_6)Ru(μ-NCNH-N,N)}_2(μ-NCN-N,N)]を選択的に得た。本錯体はdppm錯体[{(η^6-C_6Me_6)Ru(μ-NCN-N,N)}_2-(μ-dppm)]を経由してRu_2Ir_2四核錯体[{(η^6-C_6Me_6)Ru(μ-NCN-N,N)IrCl(cod)}_2(μ-dppm)]へと誘導された。一方、K_2NCNをトルエン中90℃で反応させた場合には、引き伸ばされたキュバン型の四核錯体[(η^6-C_6Me_6)Ru(μ_3-NCN-N,N,N')_3-{(η^6-C_6Me_6)Ru}_3(μ_3-NCN-N,N,N)]が生成した。さらに、[RuCl_2(η^6-C_6Me_6)]_2と[MCl(cod)]_2(M=Rh,Ir)を過剰のNa_2NCN存在下で反応させた場合には、RuM_2混合金属クラスター[{(η^6-C_6Me_6)Ru}{M(cod)}_2(μ-NCN)_2]が一段階のセルフアセンブリ反応で選択的に生成することが判明した。本反応は混合金属クラスター合成の簡便な手法として興味深い。ホスホナト多核錯体の合成に関しても検討を加え、9族金属四核錯体の合成とフラクショナルな構造を明らかとした。
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