今年度の最も大きな成果として、ネオペンチル基置換PNP配位子を有するイリジウム錯体(0.1mol%)を塩基(0.4mol%)共存下、200℃でアルキルアミンと反応させることによって、ジアルキルアミンが非常に効率良く生成することを見いだした。特にアルキル基がオクチル基の場合においては、収率86%、触媒回転数860で反応が進行し、副生成物であるトリアルキルアミンはわずか0.6%が観測されたのみであった。この反応はこれまでに報告されているジアルキルアミンの合成に比べて最も触媒活性が高く、PNP配位子を有する金属錯体触媒の熱的安定性という特徴が大きく反映された結果となっている。また、アルキルアミンとしてシクロヘキシルアミンを用いた場合はジアルキルアミンの収率が69%と若干低下したものの、トリアルキルアミンの副生は全く観測されなかった。反応の触媒サイクルにおいては、アミンのN-H結合が低配位型のイリジウム錯体へと酸化的付加する段階が鍵であると考えており、かさ高いジアルキルアミンがイリジウムと反応するのが遅いために、先に述べた高い選択性が得られているものと言える。また、生成してくるジアルキルアミンは、柔軟剤等に使用されるカチオン系界面活性剤(時ステアリルアンモニウムクロリド)の合成などに対して応用が可能である。
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