研究概要 |
本研究では,従来の触媒膜の生成技術で困難である大きな面積を持つゼオライト膜の製造を避け,容易な小さな触媒粒子の表面にゼオライト膜を生成させ,ゼオライト膜を持つカプセル型の触媒反応場を設計する。コアの触媒とシェルのゼオライト触媒膜に別の反応及びin situ分離機能を与え,新しい触媒反応インテグレーションシステムの創成,およびシンプルかつミクロ化した反応分離プロセスを追求する。触媒と原料分子あるいは生成物分子の間の相互作用を検討し,各種ゼオライト膜及びメソポーラス膜を触媒ペレット表面へ構築し,より多彩なカプセル触媒の実現とともに,連続反応をはじめ,複数の化学反応を一括完成できる普遍的システムを追及する。本年度の研究は,新規触媒を開発し、COとH_2の混合ガスである合成ガスから,フィッシャー・トロプッシュ(FT)合成反応により,一段階でガソリンに相当する液体燃料を合成できるカプセル触媒の開発を行った。 nCO+2nH_2 → (CH_2)n+nH_2O (1) 反応は(1)式のように進み,一酸化炭素と水素から直鎖炭化水素が生成する。直鎖炭化水素は,オクタン価がゼロであるため,ガソリンとして用いるためには,改質する必要がある。通常は,二段階反応を行う。一段目の反応器で気相FT合成し,二段階目で固体酸触媒を用い,改質反応を行う。しかし本研究で開発するコア-シェル構造を持つカプセル触媒を用いることにより,一段階で,ガソリンに相当する液体燃料の製造が可能になる。カプセル触媒を用いるFT合成反応では,合成ガスはゼオライト膜を通過し,コアのFT合成触媒に到達し,直鎖炭化水素を生成する。生成した直鎖炭化水素は粒子外へ拡散していく過程において,ゼオライトのトンネル構造及び酸触媒作用のため,異性化反応と水素化分解反応を受け,軽質イソパラフィンとなる。
|