単純かつ有用性の高いシアノ基に対する付加反応を効率的に進行させる触媒系、特に複数の金属が協奏的に機能する触媒系に注目してニトリルを反応基質とする新規触媒的付加反応を開発した。 本研究では、シアノ基に対する触媒的付加反応を利用して複素環を合成するために分子内反応を想定した。2-シアノメチルフェニルエステルのアシル-酸素結合を触媒的に切断、分子内シアノ基に付加させる反応(触媒的環化異性化)が進行すれば、含窒素環状化合物が合成できると考えた。様々な触媒を用いて反応を検討した結果、シアノ基への単純環化付加生成物N-アミノベンゾフランではなく、その異性体である3-アシル-2-アミノベンゾフランが得られることを見出した。p-トリフルオロメチル安息香酸2-シアノメチルフェニルをPd(OAc)2(10mo1%)とP(t-Bu)3(20mo1%)の存在下、DMF中100℃で反応させたところ、27%の収率で3-アシル-2-アミノベンゾフランが得られた。反応条件を詳細に検討した結果、触媒量のZnを加えて反応を行うと定量的に3-アシル-2-アミノベンゾフランが生成することが明らかとなった。また、最適条件下種々のカルボン酸2-シアノメチルフェニルエステルを反応させると、同様に3-アシル-2-アミノベンゾフランが良好な収率で生成した。さらに交差反応実験により反応が完全に分子内反応により進行していることを明らかにするとともに、得られる3-アシル-2-アミノベンゾフランをビルディングブロックとしたCDK阻害剤のひとつエルブフルオレンの全合成にも成功した。
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