ニッケルにη^2-配位したアルデヒドに対してケイ素化合物を反応させるとニツケルーカルボニル炭素間に共有結合が生じた。分子内に炭素一炭素二重結合が存在する場合には素早く酸化的環化反応が起こる。この環化反応はケトンに対しても有効である。但しこの場合はアルミニウム化合物を使用する必要があり、単離された錯体のX線結晶構造解析ではニッケルーアルミニウム間に結合が生じており直接的なニッケル-アルミニウム相互作用も観測された。このような背景のもと申請者はニッケルとアルミニウムの組み合わせ(以降:Ni-AI)に注目した。本研究ではNi-A1の協奏作用により実現される立体選択的環化反応の開発を目的とした。本年度は、アルキン類とイミンから得られたアザニッケラサイクルを鍵中間体とする触媒反応の開発を行った。ニッケル(0)錯体存在下ベンジリデンN-ベンゼンスルホニルアミドとジフェニルアセチレンとの反応からは、対応するアザニッケラサイクルが定量的に得られた。この錯体に1当量のトリメチルアルミニウムを作用させたところ予期しないタイプの反応が起こり、ニッケルとアルミニウムが置き換わった環状アルミニウム化合物が高収率で得られた。この反応はニッケルを触媒量に減らして行った際にも効率よく進行し、これまでに例を見ないタイプの新しい触媒の開発に成功した。同様の反応をジメチル亜鉛を用いて行った際には既に報告されているタイプの3成分カップリング反応が進行した。アルミニウムと亜鉛との違いは現在のところ明らかにはなっていないが計算化学等の手法を用いて解明したい。いずれにしても、Ni-Alの有効性を実証することが出来たものと考えている。
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